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第62話 指揮者 セルジュ・チェリビダッケ (Sergiu Celibidache)

コンサート
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クラシック音楽は指揮者によって同じ曲でも演奏が変わりますが、現在は、CDや頻繁に行われるコンサートなどで予習ができます。その分オリジナリティーにかけてきてしまうのですが。今回は独特な指揮者の紹介です。

セルジュ・チェリビダッケ(1912年7月11日-1996年8月14日)は、ルーマニア出身の指揮者です。
生前は、とにかく録音を嫌い、正規版での発売はまれ。海賊版で楽しむというものだったようです。

没後、遺族の許可を受け、大量(とはいっても録音された中の一部とのことですが)のCDが発売されるようになりました。

正規発売されているCDのほとんどは、ミュンヘンフィルとのものです。

■遅いと感じるか、きれいと感じるか。
ミュンヘンフィルのもの(いわゆる晩年のもの)を一聴すれば、一般的な演奏よりもテンポがかなり遅いことがわかります。

ひとつひとつの音、音符を丁寧に解説しているようでもあり、呼吸の深さを見せているようでもあります。
ただ問題もあり、例えば、野球で遅い球なら打てるかというと待ちきれずに空振りをしてしまうこともあります。演奏も遅すぎると、曲の持ち味を損なってしまうこともあります。

ただ、チェリビダッケ指揮のすごいところは、遅くてもきっちり演奏がそろっているところです。遅いとあわせることが大変で、ばらばらになりがちですが、そろっているため、音は澄んで聴こえるのです。相当厳しい練習とのことですが、演奏家のプロでもいやになってしまうと思います。

■チェリビダッケの効果がうまく出ない例
CDのひとつに「オペラ前奏曲集」がありますが、これは、おもしろいというより、待ちきれず私はだめです。確かに音はきれいですが、人の呼吸に合っていないのです。
合唱曲は良いものが多いですが、ベートーヴェン作曲/交響曲第9番「合唱」はあまり盛り上がらないまま、すっと終わってしまう印象です。

■チェリビダッケの効果がうまく出る例
ブルックナーのものは一般的に評価が高いです。長大な曲をゆっくり演奏するため、より強大に聴こえます。

私が個人的に気に入っているのが、チャイコフスキー作曲のものです。後期交響曲4,5,6番はどれもおもしろい演奏で、ハッとします。
交響曲第4番の第1楽章の終盤のスピードアップは、こんなに早くも演奏できるのかと驚くほどのスピードです。
交響曲6番「悲愴」は、弱音から強音を発するところの驚きが半端ではありません。わかっていてもびくっとしてしまいます。
交響曲第5番は、4楽章が聴き所で、ゆったりとためて、別な曲のように壮大です。
また、バレエ音楽「くるみ割り人形」、幻想序曲「ロメオとジュリエット」など名演が多いと思います。

■昔のチェリビダッケ
モノラルの頃の録音、例えばベルリンフィルとの共演などもCD化されています。1950年代から60年代初めですが、この頃の演奏は、テンポ良く、は

つらつとしていて、別人のようです。ブラームス作曲の交響曲第1番等は、晩年との聴き比べもできますが、モノラルで音質も悪いのですが、若い頃

の方が、一般的には受けるのかなあと思います。その時代を経ての晩年ですから、余計深いと感じるのかもしれません。

■好き嫌いの分かれるところですが
恣意的ととってしまうと、嫌いと思う方も多いかもしれません。また、リハーサルの様子などDVDでみていると大物感はありません。ただ、演奏は結果ですから、自分で良いと思うものを聴けばいいかなと思います。

なんといってもチェリビダッケ本人がレコードは、耳の悪いやつが聞くというようなことを言っています。

でも、死んでしまってはコンサートは聴けませんので、残されたCDで名演のかけらを楽しむというのが、現在できる精一杯のところです。

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