カール・リヒター指揮、ミュンヘンバッハオーケストラの演奏というと、バッハが連想されます。
やはり出色は「マタイ受難曲」。モダン楽器(ピリオド楽器)がここまで隆盛を得るまでは、賞賛されました。もちろん、今も古くなることはありません。
合唱曲は、なんといってもバランス。楽器よりコントロールは難しいと思われます。
今回のレコードは、モーツァルト作曲「レクイエム」。LPでは「死者のためのミサ曲」と日本語に訳されています。1969年発売。カール・リヒターのレパートリーと評価から考えると、モーツァルトは新しい作曲家すぎるのかもしれません。演奏自体はあまり個性的とは感じませんでした。
解説文には、高橋昭氏のカール・リヒター評があります。今後への期待が記されていますが、リヒターは短命、急逝に終わってしまいます。
モーツァルトのレクイエムは、未完に終わったことから、一般には弟子のジュスマイヤー版が浸透しています。以降も様々な盤がありますが、本人が亡くなってしまえばどれが正解とも言い切れません。
演奏の好みにもよります。私は、現代の楽器で演奏されるものがやはり耳になじむような気もします。
また、こういったLPに感じるのは、解説や作成の丁寧さです。曲の解説を石井宏氏、指揮者を先述の高橋昭氏。しっかり訳詞も記載されています。レコードが大切なもの。貴重なもの。ということが感じられる、1960年代のLPでした。